ライトダウン

はじまりと雑記。

短歌②-「黯い夜」

 

所詮。性懲りも無く、二度目の短歌投稿。

 

 

ここではない。という確信だけ持って歩む日々が始まりそうで。見失いたくないな。

 

 

 

 

短歌②

 

 

さそわれるようにのぞいた路地裏のアネモネ

微かに襲う五月雨

 

 

灰色に染まった声を拐かす、ジン、GARAM、君。

まだ足りなくて。

 

 

八月の星も雫も感情も珈琲色の海に溶かして

 

 

冷めきったスープに沈むオニオンのやけに苦くてなぜか切ない

 

 

門限も恋も渚で攫われて 地球最後の日には紅茶を

 

 

 

 

短歌①-「貴女」

 

 

 

「あの花火、撃ち落としてよ」と微笑んだ貴女は沈む 都会のビルへと

 

肌色が上げた嬌声 残響に揺らぐバロック 死を仄めかして、

 

桜に見初められ君は春の奴隷 叫びで濡れた咽喉は枯れゆく

 

「海になりたい」と嘆いた少女さえ きっといつかは空へ昇って

 

或る電波、時に淑女は喪った。「紛い物の夜・青春リボン」

 

 

 

寒いね

  久しぶりに犬に吠えられた。これがなんだかたまらなく嬉しいもので、吠え返してやろうか、と意気込んで軽い会釈をした。おおよそ意思疎通とは程遠い。この忘却の波に拐かされそうな出来事を印象づけたのは、自身未踏の地を散歩している好奇心で溢れていたからだろう。

  知らない道を歩くのは、たとえ住宅地でも楽しい。見たことない景色、と言えば聞こえが良いが所詮は有象無象の家、家、家でしかないのだけど。そんな些細な景色に楽しみを見出せるってものだから、非常に低燃費になってしまったなぁ、とこの頃強く思う。

  関係ないけど、最近は「深夜のプールサイド」に行きたい。夜中の学校に忍び込みたい。セキュリティとかね、バシバシ飛び越えて無敵になってみたい夏の夜を想っている。花火とか、撃ち落とせるかもしれない。

 

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ふと左を向いたら、遊具の奥の方に月が満月じゃないよーって感じに光ってるから、なんだか可笑しくて撮った。綺麗とか汚いとか、上手いとか下手とか、今はどうでもいいかな。

成人式

 私は、式における様々なやり残しによる虚脱感と、旧友との再会で仮面をつけたことによる自己疎外感に襲われながら成人式の会場を後にした。満足に成人式を終えられずに不完全燃焼に陥った心は、「誰かと時間を共有したい」というただ一心のみで燻っていた。帰宅の途に就く私は、燻った心のままに家へは帰らずに付近の大型スーパーのトイレで虚空を見つめながら一時間以上、茫然と時がたつのを待った。このままでは新調したスーツを脱ぎ、また等しく訪れる日常へ帰ることはできない。何もせずいればただ虚しさと時間が過ぎ去るだけだ。それを望んではいない私は、高校時代に特に仲良くしていた友人たちに声をかけた。折よくも声をかけた友人は、私同様、中学の同窓会には出席しておらず、都合よく誘いに応じてくれた。(この時点で少なくとも私は自らの進路の選択や人間関係の漸進的な構築から逃げた故に、中学・高校ともに同窓会に出席しなかったことに対するコンプレックスを感じていたのは隠すまでもなく自覚の及ぶところであった。)

 高校を卒業してからもたびたび顔を合わせていた友人と集う。私含め四人が一堂に会する頃には既に22時を迎えようとして、街は二次会やれ、三次会やれとにぎわいを見せているところであった。少し歩いて、酒に酔った者たちの大きな声が飛び交う居酒屋で腰を落ち着けた。成人式を経ての身の上の話を軽くした。ただそのひと時だけで「面白い」という感覚が私の身に沁みた。「過去の私」とは変わってしまった「今の私」を受け入れてくれる存在として向き合う彼らと言葉を交わす瞬間が私にとってなによりの心の安寧であることを再発見した。中学・高校を卒業したその瞬間に止まってしまった「過去の私」という仮面をつけることでしか接することができなかった成人式の旧友の集い。そこにはないあたたかさが確かに居酒屋にはあった。やりきれない気持ちで燻っていた私の心が再び動きだすことが何より嬉しくて、心あるままに語らいあう。改めて、卒業を経験しても今の私と仲睦まじい関係を構築してくれる人間を大切にしなければならない。強い実感と共に、まだ長く続いていく道の先へ歩いていくことの大切さに身を引き締めた。

 このような文章をブログとして残すことには若干の抵抗がある。チラシの裏にでも書き綴って机の引き出しの奥底で眠らせるのが良いのかもしれないが、一度きりの成人式である。表で騒ぎ立てる同窓会のにぎわいの遠くで、ぼんやりと、粛々と、裏同窓会が確かに行われていたことを証明するために、この記事を私は投稿する。

 

降る朝

 微かに溶け合う夜と朝。コップに注いだ一杯の水を飲み干して冴えわたった意識のもとで、結露と放射冷却で冷えた窓を開け放した。澄み切った空気を肺いっぱい吸い込み空を見る。欠けた月と淡い星。それよりもっと近くで街灯がともっていた。電線の陰で鳥は鳴いている。薄闇に浮かぶ兎のような雲が朱色に染まりゆくのを眺めていると、流星が空を裂いた。願いも言葉もなく、ただ立ち尽くしていた。一筋の光が降る朝、白い息が空に昇ってゆく。

外の雪

  一夜明ければ外は冬の表情を見せていた。それを肌で感じるべく、すぐに外へ駆け出した。粉雪の舞う風がひどく冷たく、心地よい朝だった。誰かが踏んだ雪の上を辿る。少しずつ、でもしっかりと歩みを進める。

   青い空を透き通す雲の下、冬枯れから手を離した落ち葉が、透明に固まった雪の中で化石の様に眠っていた。町では子どもたちがはしゃぎ立て、触れた雪で濡れそぼった手を赤く染めている。厚い外套を纏った男の老人はほうきを片手に空を見上げていた。時折、吹く風の冷たさに身を震わせて手を擦り合わせる彼の様子に、冬が誰しもに訪れたことへの幸福を想う。

 歳を重ねるにつれて積雪に憂う人が増えていく様に感じる。路面の凍結や公共交通機関の混雑を考えると、その憂鬱を想像することは容易だ。思い返して私はどうだろうか。まだ冬に沸き立つ心を抑えられずにいる。積もる雪を前に私は少年だ。

無味無臭の夜に。

ふと珈琲を零してみたいという衝動に駆られる。底冷えのする夜に月と星を眺めながら、片手に握られたカップの珈琲を、流星群や初雪、あるいは獣の息を潜めて颯爽と茂みを駆ける音に驚いた拍子に零してみたい。流星群を前に三度の願いを込めることも、初雪を掴むことも、獣の行く先を探ることも出来ず、そして零した珈琲がカップに帰ることもない。一瞬の隙が生んだ静寂の中を後悔と焦燥に襲われて狼狽する自分の哀れさを感じながら、何かを呪うこともできずに。そんな夜があってもいいのではないだろうか。無味無臭の夜に一石を投じる珈琲を私は強く望む。

 

壊れたカラーコーン。

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壊れたカラーコーンと壊れてないカラーコーン。

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次もまた珈琲について書くかもしれません。