短歌-1104
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旅をしませんかこの世の自販機の全てに触れて僕と君とで
起源から話をされてオレンジは時間のベルトをゆっくり下る
流しには野菜の屑も切り捨てていつか誰かの端役になろう
地下鉄のホームへ下る人波に人君人人きっと幻
シリウスの齢を花に例えだす
僕らふたつの間を辿る
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歯を磨く。散歩に出る前に魔法瓶に淹れる珈琲のための湯を沸かす。母は歯を磨いたのに、と僕を笑う。母は僕が知らない藤の花の咲く公園を知っている。
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自分が何になりたいのかわからなかった。お金も名声も愛もない世界に君と生きてみたかった。肩書なんて体にこびりついて取れないただの錆だ。優しくなりたいなんて言うのもただの暴力だと思う。
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2020/11/04
日記
自分が考えていること、その世界の外に触れたいと思う。詩でも書けそうな気分だな、と。気分だけを味わっている。
冬休みに入った。冬の太陽はいつも朝焼けのようだ。底冷えのする空気が澄んでいて、日が差す場所だけに温もりがある。
自分の生活のどこにも、答えというものが転がってはいない。一寸先の闇を手探ってみたり、闇が多少明るくなるのを待ってみたり。されど先にあるのは答えではなくて。また次の闇。"こう"してみよう、と考えたその未来、どれだけ"そう"することができるのだろうか。
まだ街は元気に活動を続けています。僕は一人冬休みです。取り残されたようなので、手探りで日々を泳ぎます。雪をかき集めるように、いずれ溶けてなくなってしまう何かを、集めて生きていたいです。
短歌-Ⅺ
朝と時雨。まだ消えない夜。立ち止まってみてください。
ただ通り過ぐ景色だけアルバムに綴じる仕事を探しています
最大の音量で聴く音楽といつも冴えない顔の柴犬
朝靄が消えないようにいつまでも
いつまでもって永遠ではなく
オレンジを撫でるあなたがそこに居た
明け方未明の空を仰げば
2019/11/6
短歌⑨
夏。
歌
この夏もあなたが主演のプロットの中で私は林檎飴を売る
向日葵が視界を覆う
夕立に藍の着物がほのめかす 死を
耐え難い。打ち上げ花火のフィナーレで
気づかれぬまま沈む灯籠
2019/8/20