無味無臭の夜に。
ふと珈琲を零してみたいという衝動に駆られる。底冷えのする夜に月と星を眺めながら、片手に握られたカップの珈琲を、流星群や初雪、あるいは獣の息を潜めて颯爽と茂みを駆ける音に驚いた拍子に零してみたい。流星群を前に三度の願いを込めることも、初雪を掴むことも、獣の行く先を探ることも出来ず、そして零した珈琲がカップに帰ることもない。一瞬の隙が生んだ静寂の中を後悔と焦燥に襲われて狼狽する自分の哀れさを感じながら、何かを呪うこともできずに。そんな夜があってもいいのではないだろうか。無味無臭の夜に一石を投じる珈琲を私は強く望む。
壊れたカラーコーン。
壊れたカラーコーンと壊れてないカラーコーン。
次もまた珈琲について書くかもしれません。