ライトダウン

はじまりと雑記。

短歌⑧

  ただ夏を感じて、夏を考えることがないままに私の夏が終わろうとしている。人生、あと幾度となく迎える夏の中に、どれほど忘れられない夏が訪れるだろうか。忘れられない夏はどれほどあっただろうか。夏はいつも活き活きとした死の匂いで充満している。もう帰らない夏も、きっと死んだに違いない。

 

 

 

 

 

 

陽は浜のすべてに等しく降りそそぐ

僕だけが生む影のいとしさ

 

 

 

月は今 微熱の街に飲まれゆく

コーヒーカップは初夏の夢を見る

 

 

 

林檎より赤が出でたる林檎飴

花占いの"きらい"と似ている

 

 

 

君は詩集に気をとられて気づかない

世界の秘密を運ぶ海猫

 

 

 

 

 

2019/8/19