ただ夏を感じて、夏を考えることがないままに私の夏が終わろうとしている。人生、あと幾度となく迎える夏の中に、どれほど忘れられない夏が訪れるだろうか。忘れられない夏はどれほどあっただろうか。夏はいつも活き活きとした死の匂いで充満している。もう帰らない夏も、きっと死んだに違いない。
歌
陽は浜のすべてに等しく降りそそぐ
僕だけが生む影のいとしさ
月は今 微熱の街に飲まれゆく
コーヒーカップは初夏の夢を見る
林檎より赤が出でたる林檎飴
花占いの"きらい"と似ている
君は詩集に気をとられて気づかない
世界の秘密を運ぶ海猫
2019/8/19